私的年金
「日本の年金制度は2階建て」といわれます。20歳以上60歳未満の全ての方が加入する国民年金が1階部分、その上に2階部分として民間企業の会社員の方や公務員・教職員の方が加入する厚生年金があります。
そうした公的年金に対して、私的年金というものがあります。任意で加入し、公的年金の上乗せして給付を受けるための制度です。将来に備えて自ら年金の「2階部分・3階部分」を作ることができます。
企業年金であったり、第一号被保険者のための国民年金基金、民間の保険会社の個人年金保険などがそれにあたります。
その中でもiDeCo個人型確定拠出年金は2017年に加入資格の対象者が拡大され、老後の資産形成のための私的年金として注目度が増しています。
この記事ではiDeCoの概要・特徴とメリット・デメリット、また同じく資産運用の制度としてよく比較されるNISAとの違いなどについて解説していきたいと思います。
iDeCoとは
iDeCo個人型確定拠出年金では、加入を希望する対象者が金融機関に自ら申込み・手続きを行い、運用商品を決めて掛け金を拠出します。
iDeCoでは複数の金融機関に複数の口座を持つことはできず、選択できるのは1金融機関かつ1口座のみです。ただし、途中で金融機関を変更することは可能です。
取り扱う金融商品は金融機関ごとで品揃えが変わりますが、各金融機関はリスクやリターン特性の異なる3以上35以下の金融商品を提示することになっています。
毎月の掛け金は5,000円から、1,000円単位で設定できます。運用対象となる商品は投資信託、定期預金などの預貯金、個人年金保険など保険商品です。
その掛け金と運用益の合計を将来の給付として受け取ります。よって運用実績によっては資産が目減りする可能性もあります。
加入対象者と掛金の上限
iDeCo加入できるのは、国民年金に加入している20歳以上60歳未満の方と厚生年金に加入している65歳以下の方ですが、その職業よって掛金の上限が変わります。
- 自営業者の方・・・国民年金基金と国民年金の付加保険料とあわせて月額68,000円まで。
- 専業主婦の方・・・月額23,000円まで。
- 会社員の方・・・月額12,000円〜23,000円まで。(企業年金の加入状況によって変わります)
- 公務員の方・・・月額12,000円まで。
↓国民年金の被保険者の区分についてはこちら
また、自分が加入資格に該当するかどうか・掛金の上限は公式サイトの「加入診断」で簡単に見ることができます。
iDeCo(イデコ)をはじめるまでの5つのステップ|加入希望者の方へ|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
会社員がiDeCoを始める場合
基本的にはiDeCoを始めるには、本人確認書類と基礎年金番号を準備して銀行や証券会社などの金融機関に申し込みます。
ただ、会社員の場合には勤務先に事業所登録申請書兼第二加入者に係る事業主の証明書という書類を記入してもらう必要があります。
この書類によって65歳未満の国民年金の被保険者であるか、企業年金の有無と加入状況など、iDeCoの加入資格があるということを事業主に証明してもらうというわけです。
また事業主の承認があれば、iDeCoの毎月の掛金を給料天引きにより事業主経由で納めることもできます。その場合、年末調整や確定申告が不要になります。勤務先に確認してみましょう。
iDeCoの給付
iDeCoの給付には、「老齢給付」「障害給付」「死亡一時金」「脱退一時金」があります。
老齢給付は原則として60歳から受取ることができます。しかしこれには最初の掛金を拠出してから10年以上経過していることという条件があります。
10年以上経過していない場合には、給付の受取が61歳以降にずれ込んでしまうことになります。
- 8年以上10年未満→61歳から
- 6年以上8年未満→62歳から
- 4年以上6年未満→63歳から
- 2年以上4年未満→64歳から
- 1ヶ月以上2年未満→65歳から
となります。
障害給付・・・疾病によって一定の障害状態になったときに受取ることができます。障害に認定され給付を受取る時の年齢や加入期間は問われません。
死亡一時金・・・加入者や加入していた方が亡くなられた場合に、年金資産を全て売却して、遺族が一時金を受取ることができます。
脱退一時金・・・以下の全ての条件を満たしている場合には、脱退一時金を受け取ることができます。
- 60歳未満
- 企業型DCに加入できない
- iDeCoに加入できない
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)ではない
- 障害給付の受給者ではない
- 企業型DCの加入者及びiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内であること,又は個人別管理資産額が25万円以下であること
- 企業型DC又はiDeCoの資格を喪失してから2年以内であること
こうして見ると脱退一時金を受け取れるのは、かなり限られたケースになりますね。
税制優遇措置
iDeCoに加入するメリットとして挙げられるのが税制優遇です。
- 掛金が全額所得控除の対象になり、所得税と住民税が軽減される。
- 運用益も非課税。通常、株式や投資信託などで得た運用的には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの場合は非課税となります。
- 受け取る給付も税額控除の対象になります。年金として受け取る場合には公的年金控除、一時金として受け取る場合には退職所得控除。
となります。
iDeCoのデメリット
資産形成のためにiDeCoに加入した場合のデメリットには、まず積み立てた掛け金は60歳まで引き出すことができないということで挙げられます。
基本的に老齢給付として受け取ることを目的にしているからです。
それからもちろん、運用している金融商品の価格の変動により元本割れのリスクもあります。
ただ投資で資産を形成しようとすれば運用実績による元本割れのリスクがあるのは当然のことですし、60歳まで引き出せないというのも、そもそもの目的が「老後のための資産形成」ですので安易に中途解約できないというのはメリットと捉えることもできるかもしれません。
個人的にはiDeCoへの加入をためらわせる大きなデメリットは手数料かなと思います。
iDeCoではまず加入時手数料、そして口座管理手数料(事務手数料・資産管理手数料・運営管理手数料)、さらに給付を受け取る際にも納付事務手数料がかかります。
なのである程度の金額を掛金とする場合はともかく、毎月数千円単位の少額な掛金で積み立てた場合には、掛金に対する手数料の割合が大きくなってしまいます。
税制メリットとにらめっこして吟味する必要がありますね。
NISAとの比較
資産形成のツールとしてよく比較されるiDeCoとNISAですが、ここで具体的な特徴の違いを見ていきます。
- まずiDeCoは掛け金の積立期間は最長65歳まで・給付の受け取りは原則60歳からとなっていますが、NISAでは資金を拠出する期間も積み立てた資産を引き出すタイミングも自分で選ぶことができます。
- 掛け金の上限もiDeCoの場合には職業などで上限がありますが、NISAの場合は「つみたて投資枠」「成長投資枠」の範囲内であれば自らの設定した金額で投資・積み立てが可能です。
- iDeCoは毎月の掛け金や給付金も税額控除の対象になりますが、NISAの場合非課税となるのは運用益のみ。節税メリットはiDeCoの方が大きいと言えます。
それでは筆者の場合
ここまで長々とiDeCoについて解説してきましたが、実は自分はiDeCoに加入していません・・・(笑)
おいおい、と思われるかもしれませんが自分なりの理由と投資計画があるのです。
iDeCoに現在加入していない大きな理由は、「60歳まで引き出すことができない」からです。
それというのも、あの新型コロナウイルスによる社会変動を経験したことが大きいですね。
疫病や災害によって、自分の職業がまた或る日突然、社会にとって「不要不急」とされてしまうかもしれないという不安。
なので、まずはNISAで「1年くらいは夫婦と猫たちで暮らしていけるくらいの原資」を貯めて、それからまた私的年金など老後の資産形成についての方法を見直す、という方針でコツコツ積み立ててます。
私の場合貯蓄は目的別に行っていますが、「将来・老後のため」の積み立て金が毎月2万円です。
そして毎月の給与の手取りが約34万円ほど。緊急時は節約してその8割で暮らすとしてだいたい1ヶ月で27万円、1年間で320万円ちょい。
↓金融庁「つみたてシュミレーター」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/tsumitate-simulator/
ちなみに毎月2万円を年利3%で積立・運用できたとしても、11年以上かかります。
・・・・・明日からまた仕事頑張ろ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。